第5回 研究会

複合連鎖災害リスクが社会に及ぼす構造的影響に対応する社会の仕組み創り~システムズ分析から~

  • 清水美香(京都大学GSS)
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災害リスクを取り巻く状況は年々刻々と変化している。従来災害は、特定の事象に基づいて発生し、特定の地域に影響を及ぼすものと考えられてきた。このため、台風・洪水・地震といった特定の災害リスクがどの地域に影響を与えるかといった観点から検討され、それに基づいた対応が行われてきた。しかし近年、災害リスクの構造は局所的・地域的な特質を超えて、様々な事象やリスクが「ネットワーク化」し、連鎖的に相互に影響しあう傾向が見られる。さらにそうしたリスクが現実のものとなって災害が発生した場合の影響も同様に、複合的に連鎖する傾向が見られる。
こうした複合連鎖災害の顕著な例が東日本大震災である。津波・地震・原発事故によって、甚大な人的物理的被害のみならず、社会経済に大きく影響を及ぼした。その影響は、エネルギー・公衆衛生(特に放射能汚染)・農業・漁業・生産業・雇用・貿易・国際関係(特に放射能の海域および空気の汚染)というように幅広い産業、政策分野に連鎖し、短中長期にわたる影響をもたらした。かかる大規模な複合連鎖災害は、従来の災害に比べて発生する可能性は低いが、起きた際の経済的社会的影響は極めて広く長期にわたり深刻になるという特徴を有する。
私達の現代リスク社会の変容、特に(a)グローバル化、都市化、自然災害、気候変動問題が連関する傾向にあること、(b) 都市沿岸地域の人口の激増・貧富の格差などの社会経済リスクを考慮すると、こうした複合連鎖災害リスクは私達が直面する大きな課題になっていくと考えられる。
複合連鎖災害リスクの社会への構造的影響として主に、(i)災害が実際に起きたときの影響が相乗的に複合化することに加え、(ii)その影響の範囲を拡大させ、深刻さを高め、(iii)短中長期的それぞれにわたって影響を与え、(iv)どのようなリスクがいつ、どこで、どのような影響を与えるかという点で「不確実性」が益々高まるといったことが挙げられる。複合連鎖災害リスクが及ぼす社会への構造的影響は、政策・実務関係者に大きな課題を突きつけるものとなっている。
こうした課題への対応には、既存のシステムやプロセスだけで十分だろうか?こうしたリスクの変化に対応するシステム・プロセスとはどのようなものか?本プレゼンテーションでは、その社会への構造的影響と公共政策的対応またはそのための社会の仕組み創りの鍵を、システムズ分析の視点から提供する。