第3回 研究会

カルマンフィルターとそのファイナンスへの応用:リスク分析を中心にして

カルマンフィルターは、当初、リアルタイムに入手可能で、雑音(ノイズ)に汚染された時系列データからノイズを取りさり、的確に将来値を予測する工学上の手法として開発された。1960年代に人類が月に到着できたのはカルマンフィルターによるところが大きいと言われている。今日、われわれが日常使う、カーナビや家電製品(お掃除ロボット)、スマートフォンなどの制御や、天気予報、船や飛行機の航路決定などにも重要な役割をはたし、工学部においては必須の科目である。

その後、カルマンフィルターは、「状態空間モデル分析(State Space Modeling)」の理論的な枠組みの下、1970年代から経済学に対する適用がはじまり、最近では、ファイナンス分野でもさまざまな応用が試みられている。

この報告では、カルマンフィルター理論の直感的な説明を行ったあとで、そのファイナンス分野、とりわけ金融リスク分析への応用事例を紹介する。特に、最近私が行った、東日本大震災と原発事故が、日本の電力・ガス会社に及ぼしたシステマティックリスク(ベータ)にどのような影響を与え方を明らかにする。また、そのデフォルト確率に与えた影響の実証研究について明らかにする。